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2023年12月

2023年12月22日 (金)

ダイハツ不正について【品質問題】

ダイハツが自社の認証データ偽装により全車種出荷停止という前代未聞の対応を迫られました。

各所ニュースにて報道済だと思いますが以下にダイハツ公式の文書をリンクします。

第三者委員会による調査結果および今後の対応について

この問題、非常に色々な考えが頭を巡り、まだ完全に整理しきれていませんが、品質保証に従事する者としての見解を冷静な視点で解説したいと思います。

1.現在自分が乗っている、使用しているダイハツ車は大丈夫なのか?

不正内容が国の定めている安全試験の条件で、合格できなかった場合に他のデータにより不正に合格にしていた、と判断しています。

この場合、特定の安全試験条件での安全性の保証/確認が未確認な設計であったと言えます。

わかりやすく例をあげると点数が80点が合格の場合、79点で不合格だったものを合格に偽装したのか、59点で不合格だったのか、誰にもわからないという状態です。

普通は80点以上のスペックを満たした製品が設計され量産されている事により、特定の試験条件での安全性が担保されている、保証されていると言えます。

そもそも、安全試験が万能ではなく、あくまでも安全性を実使用状態で正確に把握、比較、検証するために業界等により決められた特定条件での試験であるので市場で実生活で、実際の事故発生時の安全性と完全に一致、再現性を保証するものではありません。あくまで特定条件下での試験結果の比較です。

以上の事から、現在市場に流通しているダイハツ車がすぐに危険があり、運転をやめた方がいいのか、という点ではいいとも言えないしダメとも言えないということです。

問題は不正が例えば先の合格点80点に対し、79点の不合格ならほぼ無視できる程度なので問題ないだろうけど、このような不正をした場合、59点だったのか0点だったのかが誰もわからない、ということが問題であり、安全と言い切れないとも言えます。そして、実際の事故はこの安全性試験とは必ずしも完全に一致しないので、例え80点で合格している他社のクルマであっても100%安全かどうか、というとある条件では安全だが市場での事故全ての条件での安全性を保証しているとは言えない、ということです。

事故を100%再現する試験なんて不可能なので。

これは例えば電気製品でも同様です。

安全規格、例えばEMCと言う電磁波に対する規制もあくまで特定周波数での放射ノイズ、伝導ノイズ等をあるスペック以下にするように法的に規制値を定めて試験しているに過ぎません。つまりCEマークでEMCがパスしているからと言って、どんな環境でのノイズ影響を受けても誤動作しない、また他のデバイスに電磁ノイズを与えないということにはならないのです。あくまで規格のスペックに入っていることしか証明できていないのです。

なので今後のダイハツの内部調査の内容によりリコールで改善していくのか、それとも何らかの補償で改善せずに済ませるのかなと思っています。

そもそも、衝突安全性などは後付部品での対応なんてできるレベルの問題では無いはずなので、設計自体を見直す、つまり設計のやり直しとなればリコールのしようがない、というのが現実ではないかな、と思っています。

2.今後ダイハツはどう対応するのか?

これは先に少し書きましたが、普通のリコールは設計の目標値(スペック)があるものを生産したが市場での特定条件で不具合が顕在化するというものがほとんどです。これは、評価段階では製造でのバラツキ、市場での使用条件等を全てカバーするだけの評価時間等が無いので防ぎようがないものであり、逆に原因が特定ロットでの製造条件での不具合なのか、設計的な問題なのかである程度リコール対象範囲が限定的になるのが普通です。

しかし今回の問題は設計評価での段階のデータを不正操作しているわけですから、製造等がどんなにまともでもまず100%安全性設計未達のモノが市場に流通してしまっています。

普通の特定条件での不具合と違い安全性試験の不正なので、特定条件はあくまでも国等の定めた条件だけであり、それが市場で全く同じように発生するとは想定できないのが厄介です。

普通、事故等起きなければ問題が顕著化することが無いからです。

しかしユーザからしてみれば、それらの安全性試験を合格しているから他社製と同等の安全性の最低レベルは満足しているはずと信頼して購入しているわけで、それが未達ということであれば本来ならリコールして改善したクルマにすべき、があるべき姿です。

ただ、先にも書いたように自動車という大規模な設計に於いて初期設計段階で潰すべき基本的な試験内容を満足できてないとなると、設計を根本からやり直す必要もあるわけでそれは現実的には(コスト、期間という点に於いて)不可能な対策となる可能性が非常に高いです。

前代未聞なだけに、今後の対応をどうするのか、どの程度の対策で国などが許可するのか、注視していく必要がありそうです。

3. 余談

製造メーカにとって出荷停止とは一番重い判断です。メーカ勤務の立場ではそれは非常に強く感じます。

なぜなら、企業は出荷を何より優先させたい、それはユーザの要求があるから、そして企業の売上、利益にも直結するから。

今回の件で一番心配なのは、規制を一度破るクセがついたなら、他の規制についても安易に出荷優先して未達でも済ませる体質になってしまってなかったか、という事です。

規制を守る設計はいつでも苦しいものです。ただ、それを満足できないのを対策せず、易きに流れてしまっては品質がどんどん落ちていきます。

自浄努力が無くなってしまったとするならば、それは今後二度と消費者から選ばれないメーカとなってしまうという事を他山の石として深く感じた次第です。

では。

 

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